IR担当とは、所属する企業の経営や財務状況に関する正確な情報を投資家や株主に対して提供するのが主な仕事です。その仕事内容や必要なスキル、転職前に押さえておきたいポイントについて解説します。

IR担当とはどんな仕事？

IRとは、”Investor Relations／インベスターリレーションズ”の略で、企業の業績や財務状況、経営方針、今後の見とおしなど投資判断に必要な企業情報を、株主や投資家に提供する活動のことをいいます。

 

IR担当は、企業説明会や決算説明会などを設定したり、決算関連の報告書やレポートを作成・発行したりするのが主な仕事です。経営陣に株主や投資家らの声を報告すること、インターネット上のIR情報の管理・運営をすることも業務内容に含まれます。

 

PR広報もまた企業の価値を高めるはたらきをしますが、「パブリック」という言葉のとおり、PRの対象が広いのが特徴です。それとくらべると、IR担当の対象は、専門的な一分野ということができます。

 

IR担当の伝えかたによって株価が変動することがあるといわれるほど、企業の時価総額に影響をあたえるとても重要な役割です。業務をうまくすすめるためには、社内の各関連部門からはもちろん、外部の勉強会などにもすすんで参加して最新の情報をあつめておかないといけません。投資家や株主から自社の研究や専門的な技術について情報をもとめられることもあるため、普段から幅広い人脈形成を心がける必要があります。

 

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IR担当の仕事内容

IR担当の仕事内容はどのようなものなのでしょうか？具体的な業務について解説していきます。

 

決算説明会のための資料作成と運営

IR担当の重要な仕事のひとつとして、決算説明会のための運営と資料作成があげられます。一般的に上場企業は、年に2回（第2四半期決算／第4四半期決算）、機関投資家やアナリストむけに決算説明会をひらきます。

 

決算説明会では、決算状況を報告するほか、中長期計画の進捗状況や将来的な経営戦略について説明されます。説明のシナリオ、表現方法によって企業の経営や財務状況の印象が変わることになります。

 

決算説明会では報告書以外に、説明会用の資料も作成します。説明会用の資料には、株主や投資家が求めている情報がもれなく盛り込まれなくてはなりません。そのためには、事前の綿密なリサーチが不可欠だといえるでしょう。

 

有価証券報告書と決算短信の作成

IR担当は開示資料の作成も行います。なかでも重要なのが、四半期ごとに開示する「有価証券報告書」と「決算短信」です。

 

有価証券報告書とは、上場企業が作成することを義務づけられている開示資料です。有価証券報告書は以下のような内容になります。

 

・会社概要

・事業内容

・経営成績やキャッシュフローの状況

・課題

・リスク

・財務諸表

・研究開発活動など

 

決算短信とは、企業の財務情報や経営状態に関する書類のこと。経営成績や財政状態、業績予想などのサマリー情報のことをいいます。

 

IR担当は、適時開示情報（都度開示される資料）の作成も担当します。重要な情報が最初に公開されるのは適時開示においてであるため、株主や投資家の投資判断に与える影響は四半期ごとに開示する有価証券報告書や決算短信よりも大切な仕事とされます。

 

機関投資家との面会

機関投資家との決算発表後の面談もIR担当がおこなうことがあります。面談での会話内容を記録に残し、内容や理由をしっかり理解することはもちろん、自社の代表として株主や投資家との相互理解を深めるのも大切な仕事です。

 

なお面談自体を、社長など経営陣が行うときでも、投資家ごとに運用方針や投資スタイル、最近の保有状況など、面談のための情報収集をIR担当がおこないます。

 

IRサイトでの情報発信と問い合わせ対応

株主や投資家からの問い合わせへの対応やIRサイトの更新もIR担当がおこないます。個人投資家らが電話で問い合わせをしてくるケースは少なくありません。また、IRサイトは、すべての株主・投資家に公平に情報を提供するための重要なツールです。あらゆる株主や投資家がほしがっている情報をもれなく提供しなければいけません。また、頻繁に更新し、いつも最新の状態にしておくことも大切です。

 

マスメディアなど取材への対応もIR担当が行うケースもあります。

 

統合報告書の作成

IR担当は、統合報告書の作成も行います。統合報告とは、企業の売上や資産といった財務情報だけでなく、企業の社会的責任をはじめとする非財務情報をまとめたもののことをいいます。

 

統合報告書では、株主や投資家が理解できるよう、企業の価値を高めるための中長期的な方針と戦略についてわかりやすい説明をしなくてはいけません。

 

株主・投資家の意見を経営陣に報告

株主・投資家の意見を経営陣へつたえるのもIR担当の大切な仕事です。日頃から行なっている株主や投資家から聞き出した意見や要望をそのままつたえるのではなく、優先順位をつけて速やかに伝えることが求められます。経営陣は、IR担当を通じて株主や投資家のニーズを理解し、経営判断するため、IR担当が果たす機能はとても大切といえるでしょう。

 

IR担当に必要なスキル

ここまで説明してきたことからおわかりと思いますが、企業内で重要な位置を占めるIR担当には、経営管理についての総合的な知識や高い説明能力が求められるといえるでしょう。それぞれのスキルについて解説します。

 

経営管理に関する総合的な知識

IR担当は、企業が目標を達成するための総合的な管理運営に精通していなくてはいけません。アウトプットすることも大切ですが、それと同じくらいインプットすることを心がけ、IRに関する専門的な内容にとどまらず、企業の管理運営について幅広い知識を身につけておきたいところです。

 

高い説明能力

IR担当は、企業トップの代弁役として、株主や投資家に対して投資判断の材料を提供します。的確な情報を提供するだけでなく、専門的な事柄をわかりやすく伝えなくてはなりません。株主や投資家との良好な関係をつづけるためにも、高いコミュニケーション能力、説明能力やシナリオ作成能力も求められます。

 

そのほか、自社で取り扱う製品や業界動向についての知識も欠かせません。説明会を開催したりレポート作成したりするには企画力も必要になるでしょう。

 

IR担当への転職前に押さえておきたいポイント

IR担当者として転職するにあたり、どんな点に注意する必要があるのでしょうか。転職に有利とされるポイントや資格、年収などについて解説します。

 

IR担当の経験がある人材は転職に有利

IR担当として活躍するためには、その企業の事業内容や取り扱う商品やサービス、また企業理念などについてもよく理解していなくてはなりません。そのため、長くその会社ではたらいてきたプロパー社員がIR担当になることが多く、「転職市場は開かれている」とはいいにくい状況です。

 

ただし、IRは比較的新しい分野であるため、ベテランと呼ばれる人材が少なく即戦力が求められる傾向があります。IRを理解している人材であれば、他社でも歓迎されやすいといえるでしょう。特にIR担当としての実績がある人が転職先を見つけることは可能です。

 

未経験からIR担当への転職はハードルが高いといえます。経理部や財務部、広報部などで経験を積んでおくことが有利にはたらくはずです。

 

IR担当の年収は年齢によって大きく変動

多くの転職者の方が気になるであろう、IR担当の年収についてもチェックしておきましょう。「doda」の調べによると、IR担当の平均年収は、20代でおよそ400万円、30代ではおよそ500万円となっています。40代ではおよそ700万円と、年齢によって大きく変動する傾向があります。

 

参考：広報／IRの平均年収（doda）

 

IR担当への転職に有利な資格はある？

IR担当者として転職するにあたって、必須となる資格はありませんが、IR担当向けの民間資格はあります。IR担当がもつべきスキルがあることを未経験者がアピールするのに役立つ、関連する資格を取り上げて紹介します。

 

＜CIRP検定＞

企業のIR活動の充実や、IR活動の担い手を養成・認証することを目的として、特定非営利活動法人日本IRプランナーズ協会では「CIRP検定」を実施しています。基礎コースを受けるにあたって、資格や学歴などの条件はありません。IR担当の経験がなくても受けることができます。

 

IR担当の実務についての知識を深められるだけでなく、実務レベルのスキルがあることを証明するのに役立つはずです。

 

参考：CIRP検定（特定非営利活動法人日本IRプランナーズ協会）

 

＜財務報告実務検定＞

日本IPO実務検定協会では、「財務報告実務検定」を実施しています。企業の財務報告部門のリーダーを育成することを目的としたもので、IR担当業務のベースとなる財務報告についてのスキルを持つことがアピールできます。

 

「財務報告実務検定」は、「連結実務演習編」と「開示様式理解編」のふたつからなり、ステークホルダーが多い大企業のIRでの業務を想定した検定試験といえるでしょう。

 

参考：財務報告実務検定（財務報告実務検定事務局）

 

最後に

この記事で説明してきた内容をまとめると以下のとおりです。

 

転職市場においてIR担当の求人は多いとはいえませんが、即戦力となるIR担当を求める企業は確実に存在しています。IR担当の経験をもつ人材が少ないため、良い条件で転職できる可能性もあるでしょう。前向きに検討してみてください。