退職後にもらえるお金がどれぐらいあるかというのは、誰しもが気になるところでしょう。転職する際には、会社のルールに基づいて退職金の一部を受け取ることが可能です。この記事では、退職金制度の概要や退職金を受け取るために転職時に注意すべきポイントなどをまとめています。転職時の退職金受け取りに関する詳細が知りたい方はぜひ参考にしてください。
退職金制度とは
退職金制度とは定年退職を迎えた従業員に退職金を支給する制度で、正式名称を「退職給付制度」といいます。退職金制度は、必ずしも支給しなければならないと法律で義務付けられているものではなく、企業独自の制度になります。そのため、国内でも退職金制度を導入している企業と導入していない企業に分かれるほか、支給される金額なども各企業によって大きく異なります。一般的な退職金制度は以下の4種類です。
1.退職一時金
「退職一時金」とは、退職時に退職金を企業が一時金として支払う制度のことで、労働協約や就業規則にある退職金規程によって定められた内容により支給されます。勤続年数が長い場合などは、金額が高いことが多く、準備から支払いまで会社が一括で行ってくれる点が特徴です。
2.企業年金
「企業年金」とは、企業が勤労者の老後の生活をより豊かにするために公的年金に加えて選択的に設ける年金のことです。企業年金の受け取り方には、「年金」と「一時金」ふたつがあり、従業員は退職後に分割もしくは一時金として受給、いずれかの方法を選択できます。
3.前払い制度
「前払い制度」とは、退職金を退職時の一時金として支払うのではなく、勤務中に給与や賞与に上乗せする形で支払う制度です。働き方のスタイルが終身雇用にこだわらなくなりつつある、昨今の傾向に適した制度といえます。
4.退職共済金
「退職共済金」とは、会社が加入する共済から支給される退職金です。さまざまな共済がありますが、中小企業の多くは中退共が運営する「中小企業退職金共済制度」に加入しています。従業員の在職中に企業が一定の掛金を納付することで、退職後に中退共から直接退職金が振り込まれます。
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転職前に退職金で確認すべきこととは
退職金は企業が独自に制定している制度であることから、必ずもらえるとは限りません。特に転職時は、転職条件によって退職金が支給されないケースもあります。思わぬトラブルへと発展しないためにも、ここで転職前に退職金で確認しておくべき事項について理解を深めておきましょう。
退職金がもらえる勤続年数に達しているか確認する
多くの会社では退職金の支給額は国家公務員の規定を参考にしていて、「退職手当=基本額(退職日の俸給月額×退職理由別・勤続期間別支給率×調整率)+調整額」の方式で算出しています。
退職金の本来の目的は、長期で在職してくれた方へのインセンティブのようなものであることから、退職金は勤続期間が長ければ長いほど掛け率が高くなるのが一般的です。実際に就職してから1〜2年程度で辞めてしまった場合は退職金を支給しないという会社も数多くあります。
また、勤続年数の考え方についても企業によってカウントの仕方が異なります。具体的には、勤続4年の場合は3年〜4年分の支給額しかもらえないのに対し、勤続4年1か月であれば年数が切り上げとなり5年分の支給額が貰える、というケースです。また、3年目と5年目では大差はないものの、5年目と10年目では一気に数倍の支給額になるなど、細かい設定も企業によって異なるため、転職を考える際は、どのタイミングが最も得策かを前もって確認してみると良いでしょう。
就業規則や賃金規則の条件を確認する
自社に退職金制度があるのか分からないという場合には、就業規則や賃金規則に記載されている「退職金規定」を確認してみましょう。退職金規定には、支払われる金額や支払い日など、退職金に関する決まりが明示されています。ただし、規定は会社の経営状況や社会情勢によって内容が変更されることもあるため、定期的にチェックしておくことをおすすめします。
競合他社の転職でも問題ないか確認しておく
企業によっては、自社で育てた人材が同業他社へ流出するのを避けることを目的に、入社時の誓約や就業規則に、競業避止義務を定めている場合もあります。競業避止義務とは、会社を退職して一定期間、競合している他社に所属したり、自ら独立して会社を興したりしてはいけないというものです。
競業避止義務に違反すると、退職金の支給制限や、競業行為の差し止めを要求され、裁判になるケースもあります。特に、会社内で培った人脈などが仕事をするうえで重要になる営業職や、商品開発の重要なデータを知る立場にある研究職などは、会社の目が厳しくなる傾向があるため、競合他社の転職でも問題ないか確認しておくと良いでしょう。
退職金を受け取れるタイミングを確認しておく
退職金の支払い時期などは、明確に定められているわけではありません。そのため、いつ支払うのかは企業が自由に決められます。しかし、一般的には退職から1〜2か月後に支払われることが多いようです。具体的な退職金の受け取り時期については、通常は就業規則の退職金規則に記載されています。就業規則に記されていない場合は、担当者に直接確認することで、退職金がもらえる時期の目安をある程度正確に把握できます。
転職する際の退職金の選択肢とは
退職金は「持ち運べる退職金」と「持ち運びできない退職金」があります。一般的に「退職金」といわれている「退職一時金」は持ち運びができず、退職時に全額受け取るしかありません。一方、持ち運びできるタイプの退職金制度には「年金」という名前がついていおり、そのまま資産運用できます。ここからは、転職する際の退職金の選択肢について解説します。
確定拠出年金に移行し自分で運用する
「確定拠出年金」とは、確定拠出年金法を根拠とする私的年金のことです。退職金を確定拠出年金に移行した場合は、転職先の制度の有無により企業型あるいは個人型の確定拠出年金に預けることになります。個人型か企業型で手数料や運用商品に違いがあるものの、投資信託で運用すれば大きく資産を増やせる可能性があります。
退職時に一括で受け取る
退職時に一括で受け取る場合のメリットは、退職金所得控除が使えることにあります。これは、勤続年数が長いほど非課税部分が大きくなります。また、住宅ローンの返済に充てるなど直近の使途が決まっているのであれば、一時金で受け取ると良いでしょう。
企業年金連合会に預ける
退職金を老後の資金に考えているのであれば、企業年金連合会に預けることをおすすめします。その際、運用金利や年金で受け取る条件を確認しておきましょう。なぜなら、企業年金の運用金利は2%など現在の銀行預金の金利より遥かに高いことも多いためです。その他、受け取りについても20年間は確定給付で、生きている間は一生涯受け取れるケースもあります。
元勤務先の確定給付企業年金に預ける
元勤務先の確定給付企業年金に預ける場合は、80歳まで確定保証の終身年金となり、60歳以降に受け取ることが可能です。持ち運ぶ際は、自身の状況により最大3万3,000円の事務手数料が発生します。運用金利は、資産を預けた時の年齢によって0.50%から1.50%となるため、企業年金連合会に預けるのとどちらが適当かを比較検討したいところです。
転職後の退職金について注意すべきこと
転職時の退職金の受け取りについては、いくつかの留意点が存在します。後々思わぬ事態へと発展しないためにも、転職後の退職金について注意すべきことについて確認しておきましょう。
支給日までに支払われない場合は人事部などに問い合わせる
指定された支給日までに、退職金が支払われない場合は人事部などに問い合わせましょう。そのうえで、なお企業側が退職金の支払いをしない場合には、最寄りの「労働基準監督署」へ相談してください。労働基準監督署では、企業に対して、就業規則に沿った退職金の支払いを本人の代わりに交渉してくれます。
退職金の所得税申告を忘れずに行う
前払い退職金では節税できませんが、転職時に一括受け取りや企業年金として受け取る場合は、「退職所得の受給に関する申告」を会社に提出することで、退職金にかかる所得税の支払い額を減らせます。下記の計算方法をもとに控除額を算出し、確定申告をして控除を受けられるようにしましょう。
- 退職所得の計算方法
(源泉徴収される前の収入金額―退職所得控除額)×1/2=退職所得の金額
転職先の退職金制度の有無や規定についても確認しておく
転職先の退職金制度の有無について、事前に確認しておきたいという場合もあるかと思います。そのような時には、求人票の備考欄に記載の「退職金制度あり」という表記を確認してみましょう。また、転職エージェントを活用している場合には、担当の転職コンサルタントに「退職金制度がある企業が希望」と伝えるのも良いかもしれません。
最後に
今回は、退職金の概要や転職する際の退職金の選択肢について見てきました。退職金はもともと終身雇用が当たり前の時代につくられた制度であるため、勤続年数が25年未満の転職者にとっては、あまり得がありません。会社の退職金規定を確認し、将来的にもらえる額が少ない場合には、確定拠出年金を利用するなど、対策を講じることが必要といえます。ぜひ本記事を参考に退職金に関する理解を深め、退職金を受け取る際の参考にしていただければと思います。