広報には、企業の情報を社内外へ発信し、社会と良好な関係性を構築するという大切な役割があります。今回はその仕事内容や求められるスキル、転職市場の状況などについて解説します。

広報とはどんな仕事？

広報は、企業と社会との良好な関係性を築いていくために、企業に関するさまざまな情報を社内外へ発信していく仕事です。「PR（Public Relation）」と呼ばれることもあり、取り扱う商品やサービスだけでなく企業の名前や事業の内容について社会に広く伝えていくことを目的としています。

自社そのもの、あるいは自社が所有するブランドの認知を広げるための社外向けの活動だけでなく、社員に向けて行われる社内活動も仕事に含まれます。

広報の仕事内容は？

広報の仕事内容は、大きく社外向け広報と社内向け広報とに分けることができます。それぞれ仕事の向き先は異なりますが、自社について認知を広めたり、良好な関係を築くという目的はどちらにも共通しています。それぞれについて詳しく紹介していきましょう。

1. 社内向け広報

広報というと、真っ先に社外向けにPRをする仕事を想像する人も多いかもしれませんが、社内に向けた活動をするのも広報に与えられたとても大切な仕事です。広報の社内向けの仕事として、主に以下のふたつがあります。

社内に向けて情報を発信し、共有する

広報は、全社に共通意識を生み出すために、経営方針などの情報共有を社内に向けて行っています。多くの従業員は、自分の目の前にある仕事をこなすことに全力を傾けています。普段、会社が全体として目指す方向やビジョンを常に意識している人は決して多くないと言えるでしょう。

そのため、広報は、社長からのメッセージや経営方針に関する情報共有を社内に向けて定期的に行う役割を担っています。そうした活動があるおかげで、普段は特に気に留めていなくても、全社に共通意識が生まれ、結束感が強まっていくのです。

社内での関係構築

また、社員が参加できるようなイベントの情報を発信したり、社内報などで社員の取り組みを紹介する企画を立てたりするのも広報の仕事です。

多くの社員にとって、日常的な業務の中では、身近にいる狭い人間関係で完結している場合がほとんどです。他部門の社員と交流をもったり、新しい人と関係を持つ機会はとても少ないと言えるでしょう。

そんな中、社内に新しいコミュニケーションが生まれ、社員同士のあいだに良好な関係を築くために、広報は、社員が参加できるようなイベントを企画したり、情報を共有したり、また社内報などにおいて社員を紹介するような企画をしたりと、さまざまな取り組みを行っています。

2. 社外向け広報

広報が担当する社外向けの仕事の目的は、自社のこと、自社の商品やサービスを世の中に広めることにあります。社外向け広報の仕事は主に以下の3つに分けることができます。

プレスリリースを作る

まずはプレスリリースを作成し、新商品やサービスを社外に発信することが挙げられます。

広報の社外向け活動のなかで最も多くを占めるのが、プレスリリースにまつわる仕事です。新しい商品やサービス、あるいは事業展開などについて、いち早く社会に伝えます。

報道関係者への対応

メディアからの取材依頼に対応するのも広報の仕事です。プレスリリースなどを作成したことをきっかけに、新商品やサービスがローンチされたことを公になると、メディアから取材依頼がやってきます。広報はそれに一つひとつ対応しなくてはなりません。

広報がどのように対応するかによって、各種メディアと信頼関係のあり方が変わってきます。メディア担当者とのやりとりには、細やかな配慮が求められます。

SNSなどのメディアを活用した情報発信

SNSで積極的な情報発信を行い、拡散力を高めることも広報の大切な仕事になりつつあります。現代のようなネット社会では、メディアとの関係だけでなく、オウンドメディアやTwitterやInstagramといったSNSを活用した情報発信に力を入れています。広報には、そうしたチャンネルを使って積極的に情報拡散し、フォロワーを増やしながら、企業や商品・サービスのイメージアップに寄与することが求められます。

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広報に求められるスキルは？

社内外に向けて情報発信をするに当たって、広報にはどのようなスキルが求められるのでしょうか？

日本語スキル

広報は主に文字を使って情報を伝えることになります。そのため、高い日本語スキルが必要になってきます。広報が発信する情報が、そのまま自社のイメージとなり、また自社に対する評価となる場合が少なくありません。そのため、プレスリリースなどに誤字脱字など軽微なものであっても、間違いは決して許されません。会社の顔として活動している自覚を持ち、会社の代表者として常に緊張感を持って仕事に取り組むことが求められます。

危機管理・対応能力

広報には、常にトラブルに備えるため、普段から危機管理体制を整えておくことが求められます。トラブルは、いつ生じるかわかりません。広報は、いつそうしたトラブルが起きてもいいように、また起きた時に然るべき対応がすぐに取れるように備えておかなければなりません。

万が一、トラブルが発生してしまったときは、広報が事態の収拾に当たることになります。ときに謝罪をすることもあるでしょう。いかなる事態にも臨機応変に対応し、事態をスムーズに収束へと向かわせるようにしなければならないのです。

近頃は、どんなことでもSNSを介して瞬時に情報が拡散されるようになりました。そのため、情報の拡散を最小限に抑え、企業が受けるダメージを小さくすることが求められます。

コミュニケーション能力

当然のことながら、企業の顔として活動する広報には、経営者視点を持ってコミュニケーションすることが求められます。ただ社外に向けて情報発信するのではなく、経営の立場から、企業理念に沿った発信を心がける必要があります。

発信した情報にあらゆるステークホルダーが違和感を抱かないよう、言葉選びには細心の注意をする必要があります。正しく伝えるにはどうしたら良いかを考えるだけでなく、魅力的に伝えるための工夫も必要です。

未経験から広報になるのはハードルが高い

そんな重い責務が伴うというだけでなく、広報部門は概して人数が少ない傾向があります。大企業でも数人ということも多く、中小企業であれば1人で全ての業務をこなしている場合も少なくありません。そのため、未経験者にとっては狭き門だと言えるでしょう。

中途で広報として採用されるためには、経験者であるというだけでは不十分かもしれません。同じ業界であったり、転職先と前職の事業に共通点があったりするのでなければ、広報の仕事に就くことは難しいでしょう。

未経験から広報を目指すのであれば、事業会社の広報担当だけではなく、企業に対して広報戦略を提案している、いわゆるPR会社にもターゲットを広げてみてはいかがでしょうか。また広告代理店でも広報に近い仕事をすることが可能です。転職先となる企業の選択肢の幅を増やすことで、広報のキャリアを積むことにつながっていくはずです。

PR会社や広告代理店、あるいはメディア関連企業で経験を積み重ねておけば、広報の経験があると判断され、即戦力とみなされる可能性があります。まずは現職の業界の広報部門に当たってみて、それが難しいようであれば、PR会社や広告代理店、メディア関連会社に絞って転職活動をしてみてはいかがでしょうか。

また、営業の経験がある人は、新しい企業の広報職を探すのもおすすめです。大手企業の広報がマスメディアからの問い合わせに対応する仕事が比較的多いのに対して、新しい企業の広報は、自社や自社の商品、サービスの紹介をする仕事が多い傾向があります。そのため、営業の経験を発揮できるケースがあるからです。

取得しておくと有利になる資格はある？

広報を目指すに当たって必須となる資格はありません。ただし、「PRプランナー資格」を取得しておいて損はないでしょう。

PRプランナーは、日本パブリックリレーションズ協会による民間の資格です。広報やPRに関する知識やスキル、意識の向上を目的として作られました。これに合格すると、広報・PRに関する基本的な知識、また実践スキルが認定されます。

認定資格は、PRプランナー（3次）・准PRプランナー（2次）・PRプランナー補（1次）の3種に分けられています。

このうち、3次試験を受験するには、3年の広報経験が求められます。そのため、3次は、すでに広報としての仕事をしている人向けの資格と言えるでしょう。

また、認定資格に合格すると、交流会や勉強会の案内が届きます。社外とのパイプを作ることにつながるので、興味がある人はぜひ取得しておくと良いでしょう。

PRプランナー認定資格制度

最後に

この記事で説明してきた内容をまとめると以下のとおりです。

広報の仕事に未経験で就くのはハードルが高いものの、不可能ではありません。事業会社の広報担当だけでなく、PR会社や広告代理店にも範囲を広げたり、営業経験がある人は新興企業を積極的に探したりして、広報としてのキャリアをスタートさせてください。

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