退職後に転職活動をする場合、失業保険の給付を受けられるかどうかは重要な問題です。とくに気になるのが、転職先が決まっている場合。そこで今回、受給の条件や受け取る手順などについてくわしく紹介します。
転職先が決まっている場合は、失業保険を受け取れない
失業保険をもらうためには、いくつかの条件を満たしている必要があり、「就職しようとする意思」について以下のよう定めています。
「ハローワークに来所し、求職の申し込みを行い、就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても、職業に就くことができない「失業の状態」にあること」
引用:「基本手当について/ハローワークインターネットサービス」
ハローワークを通じた求職活動をしていることが条件に含まれているため、転職先が決まっている場合は、失業保険を受け取ることができないことになります。
失業保険の具体的な受給要件について、以下でくわしく見ていきましょう。
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失業保険の受給要件は?
失業保険を受給するためには、以下の3つの条件を満たしている必要があります。
・失業状態にあること
・雇用保険に通算12カ月以上加入期間があること
・ハローワークで求職を申し込んでいること
1. 失業状態にあること
「失業状態にあること」とは何を意味するのでしょうか?ここでいう「失業状態」とは、「ただ仕事がない状態」をさすのではありません。「労働したい、労働しよう」という意思だけでなく能力もあり、さらに仕事に就くために転職活動を積極的にしている、なおかつ現状として仕事に就くことができていない状態のことをいいます。
そのため、厚生労働省では、雇用保険に加入していたとしても、以下のような人は「失業状態にある」とは認めていません。
「・病気やけがのため、すぐには就職できないとき
・妊娠・出産・育児のため、すぐには就職できないとき
・定年などで退職して、しばらく休養しようと思っているとき
・結婚などにより家事に専念し、すぐに就職することができないとき」
引用:「基本手当について/ハローワークインターネットサービス」
2. 退職日以前の2年間で、雇用保険に通算12カ月以上加入期間がある
退職する日以前の2年のあいだに、通算して12カ月以上、雇用保険に加入している期間があることも給付の条件になっています。
なお、「雇用保険に加入している期間」については、
「離職日から1か月ごとに区切っていた期間に賃金支払いの基礎となった日数が11日以上又は賃金の支払の基礎となった時間数が80時間以上ある月を1か月と計算します」
引用:「基本手当について/ハローワークインターネットサービス」
としています。ただし、特定受給資格者や特定理由離職者については、特別措置があり、
「離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上ある場合でも可」
引用:「基本手当について/ハローワークインターネットサービス」
となっています。なお、「特定受給資格者」「特定理由離職者」は以下の人が該当します。
特定受給資格者:倒産や解雇などによって再就職を準備する時間がないなかで離職することになった受給資格者
特定理由離職者:期間の定めのある労働契約が更新されずに離職することになった、特定受給資格者以外の人
3. ハローワークで求職を申し込んでいる
ハローワークで求職を申し込んでいることも給付の条件になっています。「申し込む」というのは、具体的にどういうことをいうのでしょうか?
ハローワークに行くと、「求職票」を渡されます。これに名前や住所、経歴、就職の希望条件などを記入し、提出すると、求職の申し込みをしたことになります。これは、失業保険を受給する手続きのなかではもっとも早い段階に行うべきものだといえるでしょう。
失業保険をもらう流れ
失業保険をもらう流れについても確認しておきましょう。申し込みから失業保険を受け取るまでの主な流れは以下の通りです。
- ハローワークで求職の申し込みをする
- 7日間の待期期間を経る
- 雇用保険受給説明会および失業認定日に出席する
- 1週間ほどで初給付される
- 以降は毎月の失業認定日に出席すると、その約1週間程度あとに給付される
失業保険をもらうためには、まずハローワークに離職票と求職票を提出しなくてはいけません。離職票は、退職日以降10日以内に勤め先から発行されることになっています。退職したあと、会社にいけないようなら、郵送してもらうよう事前に伝えておきます。
また、求職の申し込みをするときは、離職票だけでなく、雇用保険被保険者証、身分証明書、証明写真、本人名義の普通預金通帳、印鑑を持参しなくてはいけません。忘れないように注意しましょう。
求職を申し込んだあと、7日間待期することになります。
その後、雇用保険受給説明会および、初回の失業認定日に出席する必要があります。
その後、1週間ほどで初給付されることになりますが、退職した理由が、会社のほうにあるケースでは、初回の認定日から1週間ほどすると初給付されることになります。
しかし、この記事を読んでいる転職者の方の場合は、「自己都合」という扱いになります。そのような場合では、給付制限期間は待期期間が終わってから3ヵ月間ということになっています。そのため、給付制限期間が終了し、2回目の認定日を経て初めて給付が始まります。
転職など自己都合で退職するケースでは、仮に失業保険を受けられたとしても、3ヵ月間は収入がないことを知っておく必要があるわけです。
もらえる金額と期間は?
では、失業保険はいったいいくらもらえるのでしょうか。気になる基本手当日額の計算方式と所定給付日数について解説していきましょう。
基本手当日額とは、失業保険で受給可能な1日の金額のこと。基本計算は以下のように導き出すことができます。
まず、退職前の6ヵ月の賃金(賞与は除きます)の総額を180で割ったものが「賃金日額」です。これに、およそ50~80%の給付率を掛けた金額が、基本手当日額となります。
つまり、転職前の賃金のおよそ5〜8割程度に相当すると思っていて良いでしょう。50~80%とやや幅がある給付率ですが、これは元の賃金によって異なってきます。転職前の賃金の金額が低いほど給付率が高くなると思って差し支えありません。
また、基本手当日額は、年齢区分によって上限額が定められている点にも注意が必要です。令和3年8月時点で以下のとおりとなっています(毎年8月1日に改定されています)。
30歳未満:6,760円
30歳以上45歳未満:7,510円
45歳以上60歳未満:8,265円
60歳以上65歳未満:7,096円
引用:「基本手当について/ハローワークインターネットサービス」
では、失業保険はいつまでもらうことができるのでしょうか?失業保険は、「所定給付日数」まで受給することが可能です。
所定給付日数は、退職した理由、年齢、また雇用保険の加入期間によって変動しますが、転職者のように自己都合で退職し、被保険者だった期間が仮に10年未満であれば、年齢に関係なく90日となっています(被保険者だった期間が20年未満であれば、150日)。
転職先が決まっている場合は再就職手当も支給されない
退職する前に転職先が決まっている人は失業保険を受給できませんが、中には「失業保険が受給できなくても、再就職手当を受け取れるのでは?」と思っている人もいると思います。しかし、退職する前に転職先が決まっている場合、再就職手当を受け取ることもできません。
再就職手当とは、失業保険を受給している人を対象としたものであり、給付日数を一定以上残して再就職できた場合に支給されるものです。そのため、そもそも失業保険の対象外となる退職する前に転職先が決まっている人には支給されません。
転職先が決まっていて失業保険が受給できないなら、離職票は不要?
退職時に転職先が決まっている場合、失業保険を受けられないからといって、離職票が不要とは限りません。その理由は以下の通りです。
転職先で求められるケースがある
雇用保険を取得するための手続きをする際、転職先から雇用保険の被保険者証や被保険者番号を求められることがあります。マイナンバーカードで代用も可能ですが、ない場合は離職票があると便利です。
転職してすぐに辞めた場合、失業保険を受給するために必要に
転職後にすぐまた退職することも考えられます。転職先をすぐに辞めてしまった場合、失業保険を受け取るために、前の職場の離職票が必要になるケースがあります。退職日以前の2年間で、雇用保険の被保険者期間が12ヶ月以上ない場合、前職の被保険期間と通算しなくてはらないからです。
転職先をすぐに離職することも考え、離職票はもらっておくようにしましょう。
最後に
この記事で説明してきた内容をまとめると以下のとおりです。
この記事のポイント・転職先が決まっている場合は、失業保険を受け取れない
・転職者が失業保険を受け取る場合、3ヵ月間は収入がない
・もらえる金額は転職前の賃金のおよそ5〜8割程度
退職時に転職先が決まっている場合は、失業保険をもらうことができません。そのため、手続きをする必要はありませんが、転職後にすぐ退職するケースに備えて、離職票はもらっておくとよいでしょう。
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